レヴェランス

 

刺されたという報せから追悼へタイムラインがゆくのを見てた

 

R. I. P. とはRest in the Peace なのかと気づくその頭文字

 

寝ることをあきらめきれず夜の間に指がつくった掻き傷をおす

 

扇風機の小さいやつに鼻先をよせておく まだ眠くはなくて

 

プログラム終えてなんどもその人がするレヴェランス 動画のなかに

 

からっぽの藤棚がある公園の入り口までは来て引き返す

 

初出:『八雁』2018年9月号通巻41号

バルセロナ遊覧

 

¿Adulto?と聞き直されながら新品のおもちゃみたいなお金を払う

 

階段に赤じゅうたんを敷くための留め金がある一段ずつに

 

くびれたりふくれたりしてほんとうに指みたいなソーセージ おいしい

 

スズカケと肌が似ていてスズカケじゃない並木道 木を見て歩く

 

オリーブとオリーブオイルとパンが来る 串カツ店のキャベツのように

 

五日目の切りたくなってきた爪のかたちに掌の肉をへこませる

 

胸に黄色のリボンを留めてひとたちは広場や海やパン屋へ行った

 

初出:『八雁』2018年5月通巻39号

まっすぐな首

 

 

洗面器でほんとうにする洗面の 冬の ケトルのお湯を沸かして

 

包丁の刃先をあてて考える手のひらのとうふの大きさを

    国立科学博物館アンデス

人たちの肩のすきまにリャマ像のまっすぐな首だけ見えている

 

死んだあとからだが腐らない国の絵にかいてある死んだ人たち

 

腹巻を胴にのこしてパジャマからヒートテックに中を着替える

 

初出:『八雁』2018年3月通巻38号

平皿

 

秋だった日のきみがいて繰り返しわたしのなかできみをしている

 

洗濯機が洗濯を終わらせたけどまずはさわっているツイッター

 

みんな座ってみんなしずかに眺めているスクリーンを、くるまを曳く馬を

 

今日中にメールはしよう 乗ってきた路線に沿って歩いて帰る

 

着てきたらそっくりだったセーターでツーショットしてくれる先輩

 

焼き魚置くのにあまり向いてないけれど揃いの平皿を出す

 

初出:『八雁』2018年1月通巻37号 やや推敲