短歌

現代の対話のために

初出:『八雁』2018年5月 通巻39号 渡辺が作品を批評する姿勢は、いわば自文化中心主義的なものであり、そのような姿勢で書かれたものをわたしは到底信頼することができない。と、述べてみたとしよう。これは、書かれたものへの印象を、一足飛びに作者の姿勢…

じぶんの信じるものはじぶんで決める

初出:『八雁』2018年1月 通巻37号 ――『八雁』第三十六号渡辺幸一時評に反論して 十一月号の渡辺幸一「形式と韻律の力を信じて」について、『短歌往来』八月号「30代歌人の現在」には「大きな不満が残った」のに対し、小佐野彈「無垢な日本で」は「意欲的な…

でも歌でなくてもよかったということ鴨川を来ていつか言ったね

でも歌でなくてもよかったということ鴨川を来ていつか言ったね (でもきみでなくてもよかったということ暮れる川辺でいつか話そう/山中千瀬) * 会わなくても元気だったらいいけどな 水たまり雨粒でいそがしい/永井祐 背の高いあなたの日々へ降る雨は(元…

洞田明子の〈私〉

中野サンプラザに行くときはほとんど、カフェオレのせいでお腹の調子が悪くなっている気がする。2月25日の洞田の批評会に行って、すごく面白かったので、その会の話の部分や私が考えたことの話をします。 (以下発言と書きつつ誰のと明示しないものはみんな…

言語学と短歌

卒業論文を書いた。言語学の語用論という分野、関連性理論について。語用論というのは、言語と実際の文脈との関係、どのようにして人は話し手の意味しようとしていることを理解しているのか、ということを領域としている分野だ。あとで要旨をそのままのせる…

連作空間と楽しい線形代数学のはなし

表題の通り東北大短歌3号の浅野さんの「連作空間論」を読んだはなしと、楽しい線形代数のはなしをします。 「連作空間論」は、短歌連作というもの自体について理論を立てたり議論したりすることが必要だ、という問題意識から、線形空間という数学の概念を借…

歌会で何を話すか

一般的に、関西の歌会は修辞重視で、関東の歌会はイメージング重視だ、みたいな話がある。なんとなくそうなのかも知れないな、と思うときもあるし、血液型占いとかの適当な占いの言葉みたいに、言われてみればそんな感じに思えてくる、程度の話なのかもしれ…

真鍋美恵子『羊歯は萠えゐん』

昨日は月と六百円*1で真鍋美恵子第六歌集『羊歯は萠えゐん』(1970)を読んだ。 真鍋美恵子(1906-1994)は、葛原妙子(1907-1985)と同年代で、以前の月と六百円で真鍋の『玻璃』を扱ったときにも葛原や森岡貞香(1916-2009)との関係も話に上がった。 八月…

千種創一歌集『砂丘律』

名古屋の砂丘律の批評会に行った。でも、前から決めていた京大短歌22号の校正の日程をずらすのは絶対にだめだと思ったので、すぐ京都に戻った。昼食会には行かずに帰ってしまったし、今回の批評会のことはなんだかもにょっている。 あんまりもにょりすぎて布…

稀風社『誰にもわからない短歌入門』に入門する

『誰にもわからない短歌入門』(以下『誰短』)を先週葉ね文庫へ駆けこんで買ってきました。 宣伝されていたように、短歌と短歌?なものたちへの一首評の本。そして入門書。 三上春海さんと鈴木ちはねさんが往復書簡形式で評をしているので、一つの歌に二人…