2019-05-11 あたらしい秋 短歌連作 ふりかけのちょっといいのを売っているスーパー 駅からは遠くて 四畳半のドアをあければ今朝食べたもののにおいがすることもある 手を洗う水に手首を冷やしつつ遠くからくるやさしさ 誰の 冷蔵庫の音がやむとき閉じているまぶたの中でひろくなる部屋 映画館を出て道なりにビルがある上のあたりが夕陽の色の 窓を開けば世界をわたる秋風をほめうたとして食器を洗う 歩いたらどこへ行けるということもなくてほどよく疲れるからだ 初出:『八雁』2017年11月通巻36号