2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

レヴェランス

刺されたという報せから追悼へタイムラインがゆくのを見てた R. I. P. とはRest in Peace なのかと気づくその頭文字 寝ることをあきらめきれず夜の間に指がつくった掻き傷をおす 扇風機の小さいやつに鼻先をよせておく まだ眠くはなくて プログラム終えてな…

ふみきり

夏だねと言い合いながら信号をちょっと走っておく四月末 雨が降るって聞いていたけど降らなくて上がったままの夜のふみきり いまひとつ決め手に欠ける不愉快がゼムクリップを手づかみにする 初出:『八雁』2018年7月号通巻40号

バルセロナ遊覧

¿Adulto?と聞き直されながら新品のおもちゃみたいなお金を払う 階段に赤じゅうたんを敷くための留め金がある一段ずつに くびれたりふくれたりしてほんとうに指みたいなソーセージ おいしい スズカケと肌が似ていてスズカケじゃない並木道 木を見て歩く オリ…

あいだ

段落を戻っては読む外国のなにか皮肉っぽい小説を 頼まれて人の写真を撮る指のばんそうこうのふち汚れつつ 廊下だからすれ違うとき会釈する指のあいだの水気を拭いて ページから指を離してサブウェイのうすい包装紙を折りたたむ 初出:『八雁』2018年11月通…

まっすぐな首

洗面器でほんとうにする洗面の 冬の ケトルのお湯を沸かして 包丁の刃先をあてて考える手のひらのとうふの大きさを 国立科学博物館アンデス展 人たちの肩のすきまにリャマ像のまっすぐな首だけ見えている 死んだあとからだが腐らない国の絵にかいてある死ん…

平皿

秋だった日のきみがいて繰り返しわたしのなかできみをしている 洗濯機が洗濯を終わらせたけどまずはさわっているツイッター みんな座ってみんなしずかに眺めているスクリーンを、くるまを曳く馬を 今日中にメールはしよう 乗ってきた路線に沿って歩いて帰る …

あたらしい秋

ふりかけのちょっといいのを売っているスーパー 駅からは遠くて 四畳半のドアをあければ今朝食べたもののにおいがすることもある 手を洗う水に手首を冷やしつつ遠くからくるやさしさ 誰の 冷蔵庫の音がやむとき閉じているまぶたの中でひろくなる部屋 映画館…