2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

思い浮かべる

みずばしら作りはじめた噴水へ歩いていって歩いて過ぎた わりとなにも言えないままだ 手さぐりに紐をつかんで電気をつける 寝転んで思い浮かべる会ってないあいだのきみに増えた洋服 洗剤をたらせば鍋の水面を砕けて逃げるあぶらの光 新しい靴を履くときうつ…

無題

ストローの曲がるところを伸ばしたり縮めたり よく犬の鳴く日で 塩入れに塩の丘陵 指さきをほそめてひとつ丘をくずした 新しく覚えたタイ料理の名まえ口にとなえて明るい夜道 初出:『八雁』2019年7月通巻46号

ざらざらの

食べたあといくらなめても塩味のくちをつぐんで画面に戻る 目が悪くなった気がしてうすく見る 片側だけが日なたの路地を 窓際の席をさがせばテーブルにきみの居眠りぬかづくような 連翹も馬酔木も見ずに壁ぎわをずっと進んだざらざらの壁 冬コート着たまま終…

都市生活の冬

柿の木と秋だけわかる入り口の植木を朝に見て夜も見る おねえさんに助けてもらうおねえさんは若い人たぶんわたしより したいことをしているだけだから平気 もらったパンを帰りに食べる 洗濯機に洗濯物があることをまだ覚えてる まだ もう少し 初出:『八雁』…

秋のうた

美術館のソファーまで来て座ってるその十月も半ばをすぎて 働いている間にふりはじめふりやんだ雨があり雨音もあったろう 誰もいないけれど明るい灯のしたのブランコのそれぞれの水たまり さみしさのことをちょっと分かる よい小説や映画にあって パンくずの…