ざらざらの

 

食べたあといくらなめても塩味のくちをつぐんで画面に戻る

 

目が悪くなった気がしてうすく見る 片側だけが日なたの路地を

 

窓際の席をさがせばテーブルにきみの居眠りぬかづくような

 

連翹も馬酔木も見ずに壁ぎわをずっと進んだざらざらの壁

 

冬コート着たまま終わる三月をばかのようにも思ってすごす

 

キャスターの音を鳴らして一つずつ椅子を運んだ言われた場所へ

 

初出:『八雁』2019年5月通巻45号