わたしは口内炎にならない

走ったら間に合うかもね信号が赤になるところを見届ける

 

きらいってきみが言ってた音楽と途中でわかる 窓に降る雨

 

ぼろだから忘れたときは買おうって思ってずっと使う長傘

 

読みついである日見つける栞紐を人さし指に伸ばして巻いて

 

スロープが空くまでじっと待っているスケボーの帽子の男の子

 

見ていたらちょっと眩しいほどの月 歩いて帰る夜あちこちに

 

口内炎のひとと口内炎のないわたしで食べに行く晩ごはん

 

 

 

八雁2020年3月通巻50号